資産1億円から考えたい、富裕層が実践する資産運用戦略

「富裕層」とは、一般的に純資産1億円以上の方を指します。
そして、この水準に差しかかる頃から、投資へのスタンスに変化が現れはじめると言われています。

「この銘柄は上がるか」といった短期的な視点にとどまらず、
“資産全体をどう設計し、どう守り、どう次につなげるか”――。そんな長期目線での戦略構築が重視されるようになるのです。

本記事では資産1億円超の方や、そのステージを目指す方に向けて、富裕層が実践する運用スタンスや戦略の共通点を整理しながら、次の一手を考えるヒントをご紹介します。

ご自身の資産設計を見直すきっかけとして、ぜひご活用ください。

資産の“守り”と“攻め”を両立する、コア&サテライト戦略

富裕層の間で広く実践されているのが、「コア&サテライト戦略」と呼ばれる資産運用の基本設計です。

これは、資産全体を守りの資産(コア資産)攻めの資産(サテライト資産)に分けることで、安定性と収益性のバランスを最適化するアプローチです。

コア資産(守り)

株式、債券、不動産など、長期的に安定した収益が期待できる資産群。
資産全体の8〜9割を担い、運用の基盤として安定成長を図ります。

サテライト資産(攻め)

ヘッジファンド、外国REIT、コモディティ(金や原油など)、仮想通貨など。全体の1〜2割程度を充て、収益性・分散性・テーマ性の補完を担います。

コア資産では、インカムゲイン(配当や賃料など)キャピタルゲイン(値上がり益)のバランスを意識し、長期的に資産の安定成長を目指します。
一方、サテライト資産は、相場とは異なる値動きをする資産や、成長が期待される分野・テーマに投資することで、全体の収益を押し上げたり、リスク分散効果を高めたりする役割があります。

この“二段構え”のポートフォリオ設計こそ、変化の多い時代における富裕層の王道戦略といえるでしょう。

数字で捉える資産構造:3つの「バランス指標」

資産が一定規模を超えると、「金額の大小」以上に「構造の質」が重要になってきます。

資産の全体設計の巧拙が将来の成果を大きく左右するため、次の3つの「バランス指標」を意識することが重要です。

1.レバレッジ比率(総資産 ÷ 純資産)

レバレッジ比率とは、借入をどの程度活用して総資産を拡張しているかを示す指標です。

  • 総資産=自己資金+借入による資産の総額
  • 純資産=借入を除いた自己保有の資産部分

たとえば、純資産が5億円で、借入を含む総資産が7.5億円であれば、レバレッジ比率は150%になります。

この比率が高くなるほど、借入を積極的に活用して投資効率を高めていることを意味しますが、200%を超えるとリスク過多となりやすく注意が必要です。逆に110〜120%程度では投資効率が低くなる傾向があります。一般的には150%前後が“ニュートラル”な水準とされ、攻めすぎず守りすぎないバランス感覚が求められます。

ご自身のリスク許容度に応じて、無理のない範囲で最適な水準を意識しましょう。

2.外貨比率(円と外貨のバランス)

どの通貨で資産を保有するかは、富裕層の資産設計における基本戦略のひとつです。円建て資産に偏ると、円安が進行した際に資産の実質価値が目減りするリスクが生じます。

たとえば、海外不動産の取得や、子どもの留学資金など外貨建ての支出が将来的に想定される場合、為替変動によるコスト増が直接的な影響として表れることもあります。

こうしたリスクを緩和するため、資産全体のうち外貨建て資産を50~60%程度に分散させておくのが、ひとつの目安とされています。

米ドル・ユーロ・豪ドルなど複数の通貨を組み合わせることで、為替リスクだけでなく、国際情勢やインフレへの耐性も高めることが可能です。

3.金融資産/実物資産の構成比

資産を「金融資産(株式・債券など)」と「実物資産(不動産など)」にどう配分するかは、資産運用の安定性と流動性のバランスを左右する重要なテーマです。

  • 金融資産(株・債券・ファンドなど): 相場の影響を受けやすく変動リスクはあるものの、売買やリバランスの自由度が高く、市場環境に応じた機動的な資産運用が可能です。
  • 実物資産(特に不動産): 価格変動が比較的緩やかで、安定的なインカムゲイン(賃料収入など)を見込みやすく、インフレ対策にも効果的とされます。一方で、現金化には時間がかかるため流動性は限定的です。 

たとえば、金融資産4割:不動産6割といった構成にすることで、両者の長所を活かし、経済環境に応じた柔軟な対応がしやすくなります。それぞれの資産特性とご自身のリスク許容度やライフステージに応じて最適なバランスを取ることが、富裕層にとっての運用設計の土台となります。

インデックスだけでは届かない目的地がある

資産の全体設計や構成バランスを検討していく中で、もう一つ問われるのがどのように運用していくかです。特に、一定以上の資産規模を持つ方にとっては、ただ市場に連動するだけでは満たされない目的やニーズが生まれてきます。

たしかに、インデックスファンドによる市場平均への投資は、シンプルかつコスト効率に優れた運用手段です。しかし、インカムを安定的に得たい」「相場の動きに左右されすぎない運用をしたいといった希望に対しては、インデックスだけでは対応しきれないケースも出てきます。

そこで注目されるのが、以下のような“インデックスを超える設計力”です。

債券ポートフォリオのカスタマイズ

満期や発行体、利回りなどの条件を自由に選び、自分の運用方針に合った「個別債券」を組み合わせることで、オリジナルの債券ポートフォリオを構築することが可能

株式のハイブリッド投資

インデックスファンドの安定性と、アクティブファンドの戦略性を組み合わせて、狙いに応じた運用を柔軟に実現

オルタナティブ資産の活用

ヘッジファンドやコモディティ、暗号資産など、市場と異なる値動きをする資産を取り入れることで、分散効果とリスクコントロールを強化

このような運用の工夫は、より「質」にフォーカスした設計を可能にします。
長期的な資産形成や、世代を超えた継承までを見据えるフェーズにおいては、「何に」「どう投じるか」という視点が、資産の持続性を左右するカギとなるのです。

「行動しないリスク」こそが、最大の損失となることも

資産運用においては、「何に投資するか」だけでなく、いつ、どう動くかもまた重要な判断軸です。

富裕層の方ほど、慎重に一つひとつの意思決定を行う傾向があります。
それ自体は資産を守る上で大切な姿勢ですが、慎重すぎるあまりに「動かない」という選択が、結果的に最も大きなリスクになることも少なくありません。

  • 預金で眠らせた資産が、インフレによって実質的に目減りしていく
  • 「様子見」を続けているうちに、好機を逃してしまう
  • 情報過多の中で判断が遅れ、最適な選択肢を見送ることになる

特に資産規模が大きい方ほど、一つの判断が将来に与える影響は大きくなります。
信頼できる専門家と伴走しながら、確信を持って行動できる環境を整えておくことが肝要です。

資産運用の本質は、「人生をどう設計するか」

富裕層にとって、資産運用とは“単にお金を増やすこと”ではありません。

人生における「自由度」と「幸福度」を高めるための戦略的な手段です。

  • 将来にわたって、暮らしの質を落とさずに生きられる安心
  • 自分らしい選択ができる時間と余裕
  • ご家族や次世代へのスムーズな資産承継

“人生の選択肢”を広げるために、資産が果たす役割はとても大きなものです。
だからこそ、ご自身の価値観や生き方に沿った運用設計を行うことが、何よりも重要になってくるのです。

まとめ:今こそ、次の資産設計を考えるタイミング

資産が1億円を超えたとき、それは次のフェーズに進むタイミングです。
ただ資産を「増やす」だけでなく、「守る」「活かす」「つなぐ」までを含めた、包括的な設計が求められます。

LISでは、こうしたお客様の資産背景・価値観に応じて、画一的ではない本質的な資産戦略をご提案しています。

「そろそろ本格的に考えてみたい」
「自分に合った資産運用の軸を定めたい」

そう感じたときは、ぜひ一度ご相談ください。

資産の“質”を見直すことから、新たな選択肢が見えてきます。